【インタビュー】東京向島『書肆スーベニア』未来のために新刊という木を植える、エモくてクールな古本屋。

東京で古本買取・販売をしているお店を巡り、これまでのこと、いまのこと、そしてこれからのことを、バリューブックス寄付担当・難しい本マニアの「廣瀬聡」がインタビューしていきます。今回は東京都墨田区向島にある『書肆スーベニア』の酒井さんにお話をお伺いしました。

みんな「古本買取」という仕事に、どう向き合っているんだろう。 そんな問いからスタートしたこの企画。 東京で古本買取・販売をしているお店を巡り、これまでのこと、いまのこと、そしてこれからのことを、バリューブックス寄付担当・難しい本マニアの「廣瀬聡」がインタビューしていきます。 今回は東京都墨田区向島にある『書肆スーベニア』の酒井さんにお話をお伺いしました。

インタビューを終えて(廣瀬)

2015年『双子のライオン堂』(店主竹田さん)が主催する「本屋入門」というイベントで酒井さんと出会いました。 その時は独身の会社員だったが、今はちゃんと本屋さんになって奥さんがいる。東京古書組合で月曜日の「中央市」を担当して古書店の人たちの中で見る限りではしっかり一人前の東京の本屋さんになっている。 夢を追う男特有の「夢に縛られた切迫した不自由感」を全く感じさせないままにこの人はなりたい自分になっている... ホントのところを聞きたくて訪問し、実際、ホントのことを話してもらえたと思います。

『書肆スーベニア』が向島にある理由

━━古本の買取は、どんな形態でやられていますか 酒井さん: 基本は店頭買取で、宅配も受付はしてるんですけど、積極的に宣伝もしていないので。ホームページとかには一通り書いてありますけど、そんなにはないんですよ。それプラス出張も僕一人きりでしかも営業車を持っていないので、基本は「台車」で行くことになりますという話をして。 だからこの向島界隈だけ、行かせてもらってるっていうぐらいの、すごい狭い商圏でやっていて。ほとんどもう買取のうちの9割以上は持ち込み頂いた物という形でやってます。 ━━ここに店舗を構えようと思ったのは、なんかキッカケがあったんですか 酒井さん: きっかけとしては、そうですね。今は違うんですけど、元々は住みながらやれるお店を探していて、選択肢が少なかったという中で、たまたまここ内見にきたら裏に神社があるんですけど、そこの神社で大吉出たからここでいいやっていう。 ━━えー!おもしろーい 酒井さん: たまたまその裏の「三囲神社」が、三井グループがいろいろ関わっている神社で商売うまくやっているグループだしそこの神社で大吉出るんだからいいんじゃないかなって、決めただけで。 古本買取東京_書肆スーベニア_三囲神社で大吉 ━━江戸っ子みたいな決め方(笑) 酒井さん: ここじゃなかったら、阿佐ヶ谷、高円寺の間くらいにあった物件にしてたかもしれない。

「古本屋は中央線沿い」のセオリーを破ってみた

━━よみた屋さん、西荻、阿佐ヶ谷、吉祥寺(に店舗出した)って言ってたもんね。ある意味みんなの、ある種の憧れって言ったらおかしいけど。そういう場所だもんね。 そうですね。もう、いまどき古本屋やろうと思ったら普通は中央線でやらないと、やっぱきびしいっていうのがありますよね。東京都内で言ったらそうですね、ゼロからやるんならもう中央線じゃないとまずお客さんがいないので...。 ━━中央線沿いは集客が見込める? 中央線ってやっぱりその、サブカルからそのハイカルチャーまで含めて全ての層の人が住んでらっしゃるし、文化っていうものに対しての思い入れがそこそこある人たちがまだいっぱいいるんですよね。 それが生活に根付いているから古本屋とか本屋さんにも定期的に行く人が多いですし、その辺に対して憧れを持って地方から上京するとやっぱ中央線沿いに住むって方も凄い多いので。 だからお店のやり方としても色々あるんですよ、中央線の場合って。もうガチガチの古い本だけ、箱入りのISBNなんかあるわけがないような本だけを扱うこともできるし、(消費者にも)専門家もいっぱいいらっしゃるので。 一方ですごーいおしゃれな作りをしても、やっぱそういうの求めてくる人っていうのは集まってくるので中央線の場合は。だからいろいろやり方があるし、お客さんも外からも来るし元々住んでる地元の方もいっぱいいる。 て、考えると中央線が一番強いんですよね。 ━━基本は大学(の多さ)ですよね。お茶の水・神田界隈の大学、上智とかね。中央線は奥に行っても三鷹あたりにあってでそこにさっき言ってた田舎から来た人僕なんか端っこの方でしょ?新小岩の方とか江戸川あたりから御茶ノ水とか行くと、「おおっ!」ってなる。 まあそういう意味で人が集まりやすいし、そこまで新宿・渋谷みたいに家賃が高いわけでもない、ちょうどいいところなんですよね、中央線って。 ━━最初はやっぱり(中央線沿いで)探してた? そうですね。まぁ、住みながらっていう条件で探してたのもあって。僕、実は古本屋を始める前に友達と共同オーナーみたいな形で、家賃を折半してカフェをやってたんですね。 それが高円寺にあったので、中央線上のそうゆうモノっていうのを知った上で「あんまり俺合わないな」と思っていたんですよ。 ━━あー、そういうのもあったんですね 商売としてはあっちの方がすごいいいけど、実際自分も住むしどうなんだろうってなった時に。たまたまこっちの、まあそんなでもないですけどまだ下町っぽい部分があったりする方が、僕も地方出身なのでなんとなく近しいものもあるし、住みやすそうって。

未来のために「新刊」という木を植える

古本買取東京_書肆スーベニア_新刊という木を植える ━━(ここのお店は)はじめてどれくらいですか 3年経って、いま4年目ってところです ━━経営は順調ですか いやー。結局まだその生活するレベルの稼ぎというか利益は全然出ていなくって。まあ、ぶっちゃけていうとウチ新刊扱ってるので...利益が出ないっていうのが正直なとこなんですよ。 ━━そうなんですね。 で、じゃあ新刊やめちゃえばぶっちゃけ生活できちゃうんですけど。なんかそれやってしまうと、逆にうちって、新刊含めての部分があったりするのでお客さんにとっても。どうなんだろうなっていう。 ただまあ、いまのところすぐ食うに困るような状況でもないので、じゃあ新刊も含めてどうやって上手く扱ってさらに売り上げを大きくしていくかっていうのが、いまの段階で。 コロナでみんなおこもり時期になったので、そういう対応考えるタイミングができたかな、っていうところはあって。いま実際に動いてるところですけど。 ━━新刊は、やっぱりお客さんが求めている 自分もやっぱ新刊の業界にいたのもあるし、結局古本で、それこそ100年前とか戦前の本だけを扱うって言うんだったら、それはまあ、新刊がいまどうなっていこうと知ったこっちゃないっていう話になるんでしょうけど。 やっぱり僕の立場的には、そこまで古いばっかりを扱う立場じゃないので。新刊が回ってないと結果的に、何十年この仕事するかわからないですけど、30年後に新刊がもうボロボロで古本が回ってきませんってなったら終わりじゃないですか。 それちょっと困るので何とか回せないかなっていうのと、いまそれを自分のお店の経済圏だけで回せないかなっていう実験段階でもあるんですよね。ウチで売った新刊を、買い取りで持って来ていただくっていうのが回るようになればいいなっていうのは。 ━━すごいなぁ...なんかちょっともう昨日(よみた屋さん)も壮大だったけど。木を植えてるんですね。

古本買取による「本の地産地消」

古本買取東京_書肆スーベニア_古本買取による本の地産地消 ━━買取で取り扱っているジャンルはあるんですか 特に決めてはいなくて、それこそ古い詩集とか洋裁関係の本・雑誌とか、レシピ雑誌とかでも全然とりあえず買い取りますっていう話をしていて。一般書もそうですし、漫画も受け入れてますし。とりあえず何でも買い取れますっていう形で買い取らせてもらって。 ━━あ、漫画も。(古書組合の)市場では買わないんですか 全然買ってます。ウチで扱いがちょっと厳しいなってものはどんどん市場に組合のほうに持ってってますし。 ━━新刊と古本はキレイに(棚を)分けてありますね そうですね。開店当初は混ぜてたんですけどわかりづらいんですよね。うちの場合、「黒っぽい本」(※戦前の本など、とても古い本のこと)はほとんどないので、どうしてもわかんなくなっちゃうし。混ぜておいたときに価格の差があまりにも出過ぎちゃうんですよね。 ━━あー 古本ってほとんで半額以下のものが「白っぽい本」(※比較的新しい本)だと思うので。うちは特に本当近所のお客さんが軽く入ってくるようなお店なので。店頭商品に関しては、あまり高い古本置いてないですよ。 基本バックヤードに高価なものはおいていて、(店頭に)置いてもやっぱり売れないし、別に見せびらかしたからってそれを喜ぶお客さんがそんなに来るわけではないんですよ。うちの場合って。 ━━よみたやさんと違う(笑) 中央線のお客さんだとやっぱ違うんですよ。うちの場合はそういうものを見せてびらかして置いてしまうと、逆に買取が減るんですよ。「こうゆうものじゃないと買い取ってもらえないのかな」ってなっちゃうんで。 ━━敷居高くなっちゃうんだ いまだに言われるんですよね。「こんなのでも買い取ってもらえます」って。結構何回かきてくれてるお客さんにも言われちゃうので... ━━お客さんの年齢層は 30代40代が多い印象ですね。 ━━そういう人たちが買い取りも出すし、本も買ってくれる そんな感じです。 この辺も古本屋さんがいまほとんどなくなっちゃったので。で、新刊書店も今はもうスカイツリーか浅草駅にしかないですよね。そうなってくると、もう本を読む習慣もないし。なので、そんなに「じゃあ自宅にすげえ量の本あるから買いに来てくれ」って言われて行っても、ほとんどが歴史小説とかだったり。そんな勢いなので。 ━━ライバルもいないけどお客もいない、っていう例のパターンですよね。喫茶店出しちゃいけないって言われる... まあ、そんなパターンですね。 ━━そしたら、販売はネットだより そうですね。売上のメインはほとんどネットで。新刊がコロナ前までは店頭だけにしてたんですけど、一応コロナで時間ができたのもあって、直販サイトを立ち上げて。 >>書肆スーベニアの販売サイト ━━すげー...新刊の直販なんてドキドキですね。意外にないと思う。セレクトショップ型なんだ。

本のイベントについて

━━イベントは イベントは、いまほとんどやってないですね。トークイベント、昔一回だけやったんですよ。その時は一応本に絡んでいて、その本の著者の知り合いの、ロックバーを会場に借りて、トークイベントやらしてもらって。 一応イベント自体は成功したんですけど、結局イベントの準備とか、一応連動フェアとかここでやったりしていて。でも準備とか色々やってるうちに、通常の仕事が回らなくなっちゃったんですよ。で、これ意味ないなーって思って。 ━━ひとりですもんね。大変ですよね はい。ていうのでまあトークイベントはとりあえず、それ以降やってなくて。展示関係も何度かやったはやったんですけど、お店も小さいし、棚を大きく占有してしまったりするのが、どうなのかなっていう。 専用のギャラリー用の壁とかを用意してればできるんですけど、そこまで、んーっていう感じなんですよね。 ━━一回(イベント)やってみて、ちょっと考えた 開店して1年2年ぐらいはそういうイベントフェア、展示なんかもやりましたけど ━━あんまりメリットがなかった 僕の性格の問題もあるんでしょうけど。例えば、場所は渡すから後はそっちでスケジューリングやって勝手にやってくれ、みたいな本屋さんもあるとは思うんですけど。僕はそれできないので。

自分たちで作って売る、自分たちが欲しいモノを。

━━本以外を売る作戦っていうのは 「しおり」と、この前「サコッシュ」を初めてオリジナル商品として出して。 古本買取東京_書肆スーベニア_しおりとサコッシュ ━━おおーこれですか。かっこいい。これ自分でデザイン? 大まかなデザインは僕がやって、実際のイラストはそのしおりを書いた僕の妻に書いてもらって。シルクスクリーンを版を作って、僕が刷ったっていう。 ━━へー!いいですね。 でもやっぱ、イラストレーターとかデザインができる身内がいるっていのは、すごい大きいですね。言い方悪いですけど、ちゃんとしたお金を払おうと思ったら結構なことになっちゃうじゃないですか。逆に「お金ないんでどうにか!」っていうわけにもいかないじゃないですか。こっちもクリエイターさんの皆さんの実際の部分を知ってる部分もありますし。 ━━デザインの匂いが、なんか柔らかくなるよね。こっちはそういう気持ちで見るからかもしれないけど。(笑) このサコッシュは、もともとは実はイベントで出店したとき限定で売ろうと思ってたんですよ。でもコロナでイベントが全部なくなっちゃって、一回お蔵入りにしたんですけど、何か別に、自分らも欲しいし作ろうかなぁなんて。 ━━いいですねーいいなそのノリ! で、結果的には直販サイトがあるので、そっちで売らせていただいて。残りは店頭で2,3年かけて売ればいいやみたいな感じなんですけど。 ━━奥様はいまもイラストレーターのお仕事をされている 会社員やりつつイラストの仕事もいくつか受けていて ━━全然関係ない話かもしれないけど、どうゆういきさつで...えーだってさ、ここで古本屋さんやってて出会いがあるのか、どこで出会ったのか超気になりますよ!(笑) 妻は元々、本自体は好きで。どっちかって言うと、ちょっと古めの作家が好きだったんですよね。えーと、三島由紀夫とか。その辺がレイモンド・チャンドラーとかその辺が好きで。 ━━ちょっと危険ですよ。(笑)僕がその時相談を受けたらやめたほうがいいって言うかも!(笑) うちの開店が間もない頃に、一人でしおりのプロトタイプみたいなのを作って、それを本屋さんにみてもらおうって回ってたらしいんですけど。それでリーディンライティンの落合さんのとこに持ってったら、ここ(書肆スーベニア)を紹介してくれて。 ━━それがきっかけなんですね。大事なしおりですね。

本と「出会う」価値

古本買取東京_書肆スーベニア_新刊としおり ━━(古本)買取の目利きのポイントはありますか 独自の、利益出る出ないの「基本のハードル」があって、それ以上になれば在庫するっていうだけですね。それプラス「これたぶんヤフオクならいけるなぁ」とかその辺がやっぱ感覚でしかないんですよね。 さらに店頭で置くモノって、多分500円で置いても買う人がうちならいる、っていう基準でしかないんですよね。結局お客さん次第で。 ━━3年4年やってく中で、だんだんブラッシュアップされている。何回か出してみて、こういうジャンルが売れるんだみたいのは掴めてくるっていう そういうのもありますし、ただまあその辺って、古書組合での市場で買ったりもすごいしてるので、そこで勉強してますよね、やっぱり。買ってきて試しにヤフオク出したりamazonを出したりしてるうちに傾向がわかってきて、いざお客さんから買い取る時にその値段ちゃんと見積もりが出せるっていう。 僕の場合、古本屋で修行していないので、やっぱその、自分でそれをやるしかない。市場で覚えるしかないってのが大きいですね。 ━━売り値の話で、よみた屋さんはすぐ売れると悔しいって言ってたよね。1回見て帰って次に日に買いにくるくらいの売り値にするのがいいって言ってた。 それは、すごいわかります。 理想はやっぱり、首を傾げながらでも買っちゃうっていうくらいの値段てのが一番いいんですよ。やっぱそこに付加価値と言うか、市場価値と違うプラスアルファがあるんじゃないですか。 この一人のお客さんにとってこれが「いやー1000円かー」ってなっても、でもやっぱ本人にとっては市場価値と違う部分で悩んでる部分が絶対あるので。 ━━確かに、その時その場所ってのがありますね。なんだろうね、あれ。前の日に聴いた本が、次の日に何かの都合でふっと入った本屋にあると、えっ!みたいな。なかなかそういう確率はないので。 その辺もやっぱお店の状態によりけりで。たとえばよみた屋さんは店頭にお客さんがひっきりなしに出入りするので、安売りする必要は基本ないと思うんですよ。 だけどたとえばウチの場合は、そんなに1日に何人もお客さん来ないんですよ、店頭には。なのであの棚「均一本」なんですけど、入り口のところあそこって他のお店だと多分300円400円ぐらいで売ってる。だけど、もうウチは100円でいいですってやってるから、あえてウチに来る近所の本読みの方もいらっしゃいますし。 ━━なるほど だから、値付けもやっぱお店の事情がすごい反映されるんですよね。

古本業界のエコシステム・生態系の話

━━ささま書店の話で、西荻あたりだとそこでの文化圏で本が回ってるんで、「そこで売ってくれる本はそこで売れるんだよ」って理想系を聞いたことがある。まあでも彼らのやり方の話もあるんだろうけど。 ささまさん、やめちゃいましたよね。 ━━一時代を築いた伝説の書店だったけど、(やめちゃったって)知らなくて、昨日「えっ!」てなったけど。「本の導線」みたいなものがあると思う。僕は、その場(地域)で回るのがすごいんじゃないかと思ってたけど。ささま辺りのあの「(お客さんの)内臓掴んでる感じ」というか「回ってる感」がすごいなと。バリューブックスには実は見えてない循環がある。酒井さんとか、ささまさんとか、古書組合の人の頭の中にはなんか見えないモノが見ている気が... 確かに古書組合にいっつも出入りしていると、生態系みたいのがすごい見えますね。 古書組合の市場の様子 ━━そうそう、それそれ。エコシステムじゃなく生態系 お客さん含めた、「本全体の流れ」みたいのが。古いものから、ブックオフにあるような普通の新しい本まで含めて、すごいなんか需要と供給が回ってるんですよね。 ━━「腸内細菌の会話」を聞いてるような感じですよね。これどこで食ったのかな。どんな形になって出てくんのかなーみたいな。 一方で、あるポジションでそれなりにやれてた人が突然古本屋辞めちゃうと、そこがぽっかり抜けて、やっぱバランスが悪くなるんですよ。全体の流れの。 ━━それが分かるんですね 分かるんです。特に僕、実は市場の運営の方もやってるんですけど 僕がやってるのは月曜日に毎週やってる「中央市」っていう市場がジャンルと物量が一番多い市場なんですね。そこだとすごいそこが見えるんですね。 店舗がある人はお店に置きたいものは抜いて、ネットで売りたいものは引っ抜いたりした上で、市場に持っていくと自分とこじゃ売れないけど他の人は「あ、俺はこれ使えるわ(売れるわ)」って言って買っていくっていう。 ━━あそこの本屋さんが持ってきたやつだけを見てればいいモノが手に入る、っていうことも出てくるのかな ああ、ありますけど基本一般の入札出品に来る古本屋はこの荷物を誰が出したかっていうのは見れないんですよ。ただ、システムとしては見れないんですけど、やっぱ癖ってあるんですよ。 この本の縛り方はどこどこだよねとか、出品した荷物には封筒とか品名とか何冊ありますとか書くとこがあるんですけど、あの文字だけでわかるんですよ。 なので年期が入ってる人の方が当然有利になってくるものではあるんですけど、でもやっぱり、ね、そういうのも含めてまあ目利きというか。 ━━酒井さんすごいですね。うちの社長なんかあそこいくの嫌がるんだけど。(笑) まあ面白いですよ、中にいると。

メルカリの勢い

━━メルカリも結構(市場の話と)似ている気もするんですよね。あの人が出品したやつを買えば間違いないっていう信頼みたいな。評価もつくシステムだし。 それ、すごい見てて思います、僕も。 フォロー機能があるんですよ。それで、意外だなーと思ったのが仕事を引退された定年を迎えられた方とかが趣味で集めてた骨董品とか古道具を、自分のお店としてメルカリで売ったりとかしはじめてて。そのメルカリ上の骨董界隈みたいのできあがってて。 ━━おおーメルカリすごいなぁ そこにたぶん「この人は商売人だろうな」っていう、ガチの人とかもメルカリでアカウント作って結構出してたりします。やっぱそういうとこにはフォロワーがもう何百人ってついてて。 ━━バリューブックスも販売サイト立ち上げて、自分たちで買取と販売を回して、自分たちの経済圏をつくろうとしている 今ほんと、ブランディングというか自分ところでの経済圏なりを作るのっていうのは、すごいやりやすくなったなと思うんですよ。 昔は本当ね、カート機能借りて、クレジットカードの代行と契約して。高い手数料払わなきゃいけないみたいのすごい多かったですけど。結局、いま簡単に始められるところで言うとアマゾンが一番高くなっちゃいましたからね、手数料。 (メルカリだと)10%で、らくらくメルカリ便とか使ったら、一般人でもすごい安く使えちゃうし、ヤフオクでも今普通のアカウントで10%ですからね。 ━━記事制作の企画で、アマゾン・メルカリ・ヤフオクでどこが一番本を高く売れるかやったとき、ヤフオクは見ている人が少なくて、売れるスピードが遅かった。メルカリなんかも一瞬で出したら売れたんですけど、ヤフオクは2週間くらいかけて値段下げてって、やっと売れた!みたいな。 ヤフオクはもう趣味人しかいないんですよ、ほとんどが。だから出たばっかりの本は、やっぱりメルカリはアマゾンの方が反応が早いですね。 ━━ああ、集まる人が違うんだ そうですね。ヤフオクって結局もう使いづらいんですよ。ただ、あんだけ大きいシステムなので、ガッツリ変えられないっていうせいでどんどん古臭いシステムになっちゃてて。多分今一番フリマっぽいサービスの中でいざ買ったら、やり取りがすげえめんどくさいってサイトになっちゃってるので。 ━━それでもヤフオクなら売れそうだなというモノもあるんですね ありますね。逆にもうどんどん客層が分かりやすくなっているので、例えばもう古いミニカーのおもちゃとかだったら、ヤフオクが一番高く売れる。時間は多少かかるんですけど。 でも、長い目で見たらヤフオクは厳しいって思いますね。結局客層も年齢そうも高いので、どんどん、ね。メルカリはすごい楽ですよね。 ━━(メルカリは)送るのも楽だし。でもヤフオクもありましたよね。メルカリらくらく便みたいなやつ ああヤフネコパックっていうんですけど、あれ最大の違いが、ヤフオクのやつは営業所かコンビニに持ち込まないといけないんですけど、メルカリ便って取りに来てくれるんですよ。しかも1件30円で取りに来てくれるんですよ。おかしいでしょ!? ━━ええっまじで! だって送料自体があんなに安いのに、プラス30円で取りに来てくれますって言うから、一個あたりプラス30円で来てくれるっておかしいでしょ ━━そういう契約してるわけじゃなくて メルカリの(一般向け)システムとして提供されてる。 ━━知らなかった。どんどんみんなメルカリ使うよね、そしたら。ヤバいですね。でも役割はバリューブックスとはちょっと違いますよね。一度にたくさん(の本を)整理したいとかっていう場合はウチを使ってもらった方が(ラク) ━━(メルカリを)十分に活用している感じですか そうですね。とにかくやれるものを一旦やってみないことには、ていうのがありますし、逆に組合に入ってるおかげで、いわゆる老舗とか大店(おおだな)って言われる古本屋さんに、いまからたどり着くのは百パー無理だと思ってるんですよね。いまから、じゃあ10年後によみた屋さんぐらいになります!って言っても多分無理なんですよねもう。 ━━すげえ見切り... できる人はいると思います。実際に、神奈川のイセザキモールでやってる『馬燈(まとう)書房』さんは、そういう人ですけど。 ━━無理っていうのは、どういう部分でそう思いますか こればっかりはなんかその、本人の才覚みたいなものはあるんですけど。 とにかく本を覚えたり、古本屋的なモノを覚えるのはすごい速い人って絶対いるんですよね、たまに。で、それプラスビジネスがちゃんとできるって言う人が、結局よみた屋さんとか、あんまり表には知られてないけど、ちゃんとやれる古本屋さん、高いものを扱ってるようなところはなれると思うんで。 ━━(老舗・大店を)目指したいみたいな気持ちはあるけどっていう感じですか そこまででもないですけど。でもやっぱり、単価の高い黒っぽい本をメインに扱う古本屋さんの方が、商売としては安定していますね。そういう意味で言えば、そうなりたいなと思いますけどね。

ちゃんと「ビジネス」として本を扱う

━━昨日、よみた屋の澄田さんが、「自分は買取で、販売、値付けは他の人がやっている」って言ってて。ひとりでお店やられてるってことなんですけど、自分で買取して自分で売るってなると、「これは売りたくないから高くしちゃえ!」みたいなことはない 本が好きすぎる人は値付けに向いてないとか、そういうのはあると思うんですよ。 でもまあ、なんだろうな。普通に出版社にもいたからでしょうね。作るコストを知ってるので。僕、本の内容には惹かれてるものとかもあるんですけど、それはそれで、やっぱモノでしかないと思ってる部分が大きいので。 ━━そこは自分の中で全然バランスが取れてる そうですね。どうしても大事にしたいっていう本があれば、それは新刊で売るんですよ。古本で入ってきても店頭には出さずにアマゾンとかに出しておいて、そっちはそっちで売れればいいやっいうのはあって。 店頭には基本ちゃんとこれが重版されたりして、また誰かの手に届くようにしたいっていう本は新刊でしか売らないです、基本は。 ━━ああ、そうやって決めてるんだ。すごい

これからの出版のこと、紙の本のこと

古本買取東京_書肆スーベニア_紙の本と酒井さんと廣瀬さん ━━出版はどうなると思いますか。よみた屋の澄田さんが言ってて気になったのは大量出版大量出版、その時代の前はセレクトショップ的な本屋しかなくて、それが終わったあとは今セレクトショップが出てくる、あれは元々の古本屋(の姿)が現れてるだけでそんな大騒ぎすることではないと思っていて。大量出版、終わったのかなぁって。 大手を見れば大量出版の時代が確かにあったんでしょうけどね。裾野を見れば日本の出版て、基本小規模の方が大多数でしたけど。 ━━終わったというよりは徒花(あだばな)が咲いて、消えようとしてるだけなのかなぁ 僕はそう思いますね。 たまたま出版社にいた頃から、戦後の出版業界で働いてたもう引退、ていうか引退してるはずみたいな人たちと何人か知り合って。やっぱその人たちの話聞いたりもすると、戦後にもうなんか訳のわかんない出版社ボンボンボンボンあったんですよね。 それがもうすごい勢いで潰れてって、平成不況かなんかのタイミングで。その中で未だに生き残ってるところもありつつ、まあその辺もいよいよ消えるっていうのもあるけど、逆にそういう戦後にできた出版社でちっちゃいところが、もう社長も引退したい、儲かんない、やめるって言い出したところを「買いたい」って言う若い社長さんも結構いるんですよ。 ただ、俺出版社やりたいぜっていう強い思いがある人ほど、実はそういう情報って全然知らなくて。なんとなくよその業界でそれなりにうまくやってた中小企業の社長さんとかが、商売うまくいったから憧れの出版業界やってみたいなって感じで人づてに情報回ってくるんですよ。そういう社長さんの方が。 で、買わないかって言われて買って、なんかその人がいいと思ったよくわかんないビジネス書を出して自爆するんですけど。(笑) ━━うわぁ怖い...ドラマになりそう... そういのは結構ありますけど。まぁでも、全然やりたいって人はいると思いますし。 ━━大手出版社は消えるんですかね でも「出版社」って言っちゃうとパブリックな存在に思われちゃうけど、ほとんどの小さい出版社って社長さんが好き勝手にやってるだけじゃないですか、結局は。そういう意味で考えれば、別に一代で潰れちゃったってなんてことないし、そこで育った編集者がじゃあ自分でまたやりますって言えばそれだけの話なので。 逆にだから大手出版社が潰れちゃったら、それなりに優秀な人は自分でやるからいいんじゃないすかね。会社にぶら下がってる人だとね、多分どっかに行くんだろうけど。 ━━僕なんか、どう潰れないかっていうシュミレーションが頭の中で浮かばないんですけどね、大手出版社が。給料だけ聞くと無理だろうって思うんですけど。夏葉社の社長とかみてると、これならいけると思うんだけど。 まあでも、人を減らすしかないですよね。編集もそうだけど、特に営業がいま外回る意味なんてほぼないので。 ━━紙の本はどうなるか 本自体読まれなくなってなったってのある程度分かるんですけど、紙の本をもうダメでしょっていうのも、ある程度はもちろん、時代の流れなんですけど。 なんかブームっぽい部分があるんですよね。シンプルな生活とか、モノをもたないみたいなブームがすごいいまあって。ミニマリストとか。 最近よく聞く商売の付加価値とかも、「人とのつながり」とか、一番なんか何もなさそうな所に価値をおかれちゃってるので。それはまあブームと言うか、たまたまでしかないから、結局耐えられた人はその先またそれなりにまた商売は続くんじゃないかなと思ってるんですね。 ずーっと繰り返してるじゃないですか、歴史書とか読んでればわかるけど。コロナだって100年前に同じようなこと起きたりしてるし、同じようになんかしょうもないこと人間もやってて、全然対策できないみたいな。(笑) ━━また忘れちゃうのか だからまあ、しばらくは実態のない価値に重きを置かれる時代は続くんでしょうけど、ITもあって。でもしばらく経つとまた何かモノがどうこうって話にはなるんじゃないですかね。もっとちゃんとモノを持って、財産を手元に持たないとどうなるか分かんないっていう時代が来るかもしれないし。 ━━昨日(のよみた屋さんの話と)今日と射程距離がみんな長いですね

「苦じゃない」「できる」仕事で独立を考えてみる

━━本屋を始めたきっかけは 元々は、最終的にはなんか自分で出来れば、自分でやれるのが一番気が楽だし、誰にも命令されないしと思っていた中で、ホントたまたまだったんですよね。 最初に出版社の方に勤めて、その後倉庫に来て。じゃゃあ製造と流通は見たんで、あと販売をやったことないからやろうかなっていうのが最初のきっかけ。 ━━出たーホントいまどきの若い人たちはきっちりしてるわ。大学を卒業されてからずっと本関係の仕事ですか 大学出て、最初は実は僕、ネットの広告代理店にいたんですよ。そこに1年ちょいくらいでしたけど。辞めて、で、リーマンショックが起きて再就職できないってなっちゃったんですよ。そっからそれなりに貯金してたのでいろいろ好き勝手やったり、YouTuberじゃないですけど、それに近いようなことやってたりとか。 ていうのをやってるうちにお金がなくなっちゃったので、就職しなきゃってなって入ったのが出版業界だんたんですよ。 ━━いまおいくつ? 今年で37才ですね。 ━━出たー!僕的にいうとね、あの黄金世代の逆みたいな感じで、ワイルド世代って呼んでて。ウチの社長もそうでしょ?情報ステーションってとこのやつもそうだし、双子のライオン堂の竹田さんもそれですよ。同年代みんな何が共通してるかって言ったら、普通の会社に勤めたくないっていう。ていうか勤められなかった。ウチの社長もそうだし。本人も嫌だって言ってたけど、あのときの雰囲気もそういう時代だったような気がする。氷河期っていうか超氷河期だから。ワイルド世代はね、強いですよ。 ━━出版社に入りたかった 本が好きで、まあ嫌いな人がいるとも思わないんですけど。(笑) 好きなので、たまたま「あぁ出版業界入れるんだー」と思って応募して、普通に「あぁいいっすよ」ってなった。 ━━じゃあ元々(本に関わる仕事が)苦じゃなかったんだ

『書肆スーベニア』のこれから

古本買取東京_書肆スーベニア_本屋としての在り方 ━━いま感じている課題感というか、どういうことを今後やってこうかなっていうのはありますか 課題と言うか理想としては、やっぱりお店がちょっと小さすぎたなっていうのがあるんですよね。新刊の物量とか、いまぐらいでもちょうどいいとは思うんですけど、やっぱりバックヤードの在庫も含めてですけど、ちょっと足りないっていうのが、なんとなくあって。 ━━(お店は)何坪ですか? 10坪弱ですね奥まで合わせて、水周りとかもあるんですけど。 ━━冊数はどれくらい いまどれくらいだろう。3000くらいじゃないですかね。3000から5000くらいで。 新刊も置いちゃってるので、やっぱりどうしても価格帯もそこまで高くないので、お店の維持は全然できるけど...厳しいかなって感じになっちゃうんですよね。 もうちょっと広いところに行ければいいかなぁと思うんですけど、これは僕自身の課題で、20坪あたりに引っ越して、バックヤード10坪、売り場10坪でやったとしたら理想なんですけど。 それやろうと思うと人雇わないといけないんですよ。で、僕はいまのところ人雇ったことないんで、人を雇ってレジのお金を預けるって百パー無理だと思ってるんですよ。(笑) ━━あーそうなんですか! 「俺絶対信用できないし!」とか思っちゃって。と思っちゃってるからなかなかなんですけど。 ━━性格の問題はあるかも知れないですよね 当然、組合にいれば人雇ってる人いっぱいいるわけなんですけど「そこはもう割り切るしかないよね」っていう話がまずあったりとか、いろいろ聞いたり。でもその一方で「○○されたんだよ、このまえー」みたいな話がちょいちょい出てくるんですよ古本屋さんって。(笑) あと、古本屋さんってバイト募集すると応募は来るんですけど、「いちいち品揃えにうるさく言われそうだな」っていうこだわりが強そうな人とかが応募してくるので。(笑) ━━あぁ、オレみたいな!(笑)俺入ったらえらいことですよ。(笑) 近所の本に興味ないおばちゃんにパートできてもらうのが、一番実は理想だったりするんですけど。 ━━知り合いとかにやってもらえると一番いいのかもしれない そうですね。 ━━広げたいけどどうしようかっていう感じなんですね そこは経営者としての僕のランクが上がらないといけないんだな、っていうのもありますし。もちろん予算の問題なんかもありますしね。 結局、コンパクトなお店で一人店主でやってる本屋さんで、実際に回ってるとこって僕ないと思います。家賃がほぼタダだったりとか、お酒出してそっちから売上出てるとか。それ以外にまず見たことないですもん。体力が小さいままなので何もできなくなっちゃうんですよね。 ━━いま、次のステージに行くタイミングなのかもしれないですね そうですね。引っ越すにしても家賃高いしなーっていう。結局コスト部分を意識して店舗考えちゃうと、店舗をやらずに地方で倉庫を借りんの一番安いし効率的じゃんって絶対になるので。じゃあここから移転しない方がいいんじゃないかなっていうのが出ちゃうし。

『書肆スーベニア』の本屋としての在り方

━━最後に、「本屋としての在り方」をお聞きしてもいいですか うちってそのイベントもやってなかったりっていうのもあって、サロン的な本屋さんをやるつもりもないですし、人と人のつながりとかどうでもいいと思ってるんですね。 ━━おぉー ここはあくまで、現状それしかできないってのもあるんですけど、僕は本を飯のタネとして扱って、みんなが買ってくれると僕がご飯食べられるし、お店が続きますっていう。みんなはとりあえずここに本屋があって、好きな本買えるっていう状態を維持できますよって言うだけでしかないと思っているので。 そのためにはお客さんの顔を思い描きながら、新刊を仕入れたりもしますし、古本も値付けをしたりしますけど。 でも特に、こういう下町にいると個人のお店もまだいっぱいあるので、近所でラーメン食ったり定食食ったりすると、結局そこの全然違うお店、商売でもやっぱ同じ感覚なんじゃないかなっていう。常連さんとか、そういうのはもちろんありますけど。 基本的には別にそれを死ぬほどやりたくてやってるわけでも、うちのお店を常連さんだけでただ回したいだけかっていうとそうでもないし。基本的には自分がたまたまできるようになったことで飯を食べてて、それがみんなで回ればいいねぐらいにしか思ってはいないと思うし、それで十分だと思っています━━いいこと言いたくなる、ストーリーを語りたくなる場面で、さらっと包み隠さず出せるところが素敵だなと思います キレイゴトというか、そういうエモい商売って、いま、できるじゃないですか。でもそれって一番弱いし、「エモいブーム」が終わってしまった瞬間に終わる商売になっちゃうんで。んー。そこに頼ってしまうと後がないなっていうのはありますね。組合にいたらそういう商売やってた人で、生き残ってる人いないですもん。 ━━あぁそうかぁ 外見はずっとエモいまんまの、裏は凄いガチガチな古本屋はいっぱいありますけど。(笑) ━━新刊主体は絶対に続ける?冒頭の話と、いまの最後の話はズレだなと思って やりたいとは思ってますけど。 でもそこって僕個人としての気持ちだけであって、その経済ってか僕の懐とはまた違うとこなんですけどね。いま僕子どもいないですけど、子どもできてお金がかかるようになった時に、もっとお金ないと駄目ってなったら、新刊バサっとやめるかもしれないし。 ━━あぁ、そうですよね。いいとこどりはしたいですけどね それなりに新刊をちゃんと続けようと思ったら、やっぱりイベントなりを回さないといけないのかなと思いますけどね。新刊の方がやっぱりイベント重要ですからね。 ━━旬のモノをその時にちゃんとっていう意味では、そうですよね やっぱり古本も扱ってるので、新刊に手間がかけられないんですよ。そういう意味で仕入れも全部ほぼ取次経由なんですね。いちいち直取引しないんですよ。 別にそれで直取引して、それで正味(原価)が1割下がります、ってなっても、その手間の方が無駄と思ってるんで。古本に値付した方が全然儲かると思ってるから。 でも取次経由でやってると当然、版元とのつながりはあんまりないわけですよ、僕の場合。で、イベントとかもだから別にどっかに話持ってってもできるって事もないので、そういう意味で言うと新刊に関してはこの先ちょっと厳しいかなとかは思ったりはしますけどね。 (ここでインタビューは終了しました)

あらためて、古本買取について思うこと(廣瀬)

「古本買取」は本の生態系の中の最重要な機能です。その機能を磨き続けなければならないという自分の中の切迫感が特にコロナ禍の閉塞の中で強くなってきました。 「一人本屋」という最小単位で生き抜く酒井さんに役に立つノウハウを教えてもらえると期待して『書肆スーベニア』に訪問したのですが、恐らく失敗したみたいです。(笑) 酒井さんはこの年代特有(と私は思える)の理詰めのアプローチで仕事を捉えていますが実際行動は矛盾に満ちています。住み心地とおみくじで店の場所を選び、儲からないのに新刊を売り続けつつ古書組合で学ぶ。有名古書店を尊敬しつつも目標やモデルにはしない。「本はメシの種」と言いつつ「エッセーが好き」と微笑む。「エモいのは長続きしない」と言いながら「お客さんの顔を思い描き」ながら新刊を仕入れる。 結局、「古本買取」とか「古書店」とか、そういうメタな名称は意味が無いのかもしれない。 言語化と数値化がないと、拡大と効率化を「見える化」できないので、資本主義ではやっていけないのですが…。『書肆スーベニア』と酒井さんは一つしかないので(この人はアルバイトを雇う気もない、今のところ…)拡大は絶対ない。 参ったな。せっかく「古本買取」の実質では無くて形式面を磨き上げることでこの苦境を脱することができないかと考えついた気がしたところだったのに…。 本を売る人(買う人)それぞれの実質に向き合うことがやっぱり大事なんだと思い始めてしまいました。 古本買取東京_書肆スーベニア_しおりとサコッシュ ***** お店の場所:東京都墨田区向島2-19-11 >>書肆スーベニアグーグルマップ >>書肆スーベニアのwebサイト >>書肆スーベニアの販売サイト >>書肆スーベニアのツイッター >>酒井さんが参加している「本屋ラジオ!放送局」 ***** <関連記事>東京に住むあなたにおすすめの古本買取サービスまとめ【引っ越しや断捨離に】
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